・・・毎日朝早く妹のアガアテが部屋に這入って参って、にっこり笑うのでございます。アガアテはいつでもわたくしの所へ参ると、にっこり笑って、尼の被物に極まっている、白い帽子を着ていまして、わたくしの寝床に腰を掛けるのでございます。わたくしが妹の手を取・・・ 著:リルケライネル・マリア 訳:森鴎外 「白」
・・・彼らが小さい一冊の本を書くためにも、その心血を絞り永年の刻苦と奮闘とを通り抜けなければならなかった事を思えば、私たちが生ぬるい心で少しも早く何事かを仕上げようなどと考えるのは、あまりにのんきで薄ッぺらすぎます。七 私は才能乏・・・ 和辻哲郎 「ある思想家の手紙」
出典:青空文庫