・・・やがてあの人は宮に集る大群の民を前にして、これまで述べた言葉のうちで一ばんひどい、無礼傲慢の暴言を、滅茶苦茶に、わめき散らしてしまったのです。左様、たしかに、やけくそです。私はその姿を薄汚くさえ思いました。殺されたがって、うずうずしていやが・・・ 太宰治 「駈込み訴え」
・・・ぼくが太宰治を愛する所以でもあります。暴言ならば多謝。この泣き虫は、しかし、岩のようだ。飛沫を浴びて、歯を食いしばっている――。ずいぶん、逢わないな。―― He is not what he was. か。世田谷、林彪太郎。太宰治様。」・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・君の不当の暴言に対して、僕も返礼しなければならぬ。」なかなか荘重な出来である。それにも拘らず、少年は噴き出した。「なあんだ、僕と遊びたがっていやがる。君も、よっぽどひまなんだね。何か、おごれよ。おなかが、すいた。」 私も危く大笑いす・・・ 太宰治 「乞食学生」
・・・そのとき諸君は夕焼を、不健康、頽廃、などの暴言で罵り嘲うことが、できるであろうか。できるとも、と言下に答えて腕まくり、一歩まえに進み出た壮士ふうの男は、この世の大馬鹿野郎である。君みたいな馬鹿がいるから、いよいよ世の中が住みにくくなるのだ。・・・ 太宰治 「善蔵を思う」
・・・元来婦人の性質は穎敏にして物に感ずること男子よりも甚しきの常なれば、夫たる者の無礼無作法粗野暴言、やゝもすれば人を驚かして家庭の調和を破ること多し。之を慎しむは男子第一の務なる可し。又夫の教訓あらば其命に背く可らず、疑わしきことは夫に問うて・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・どんな権力の意識がこの人の背後にあれば、あのような客観性のない暴言を吐き得たのでしょう。 田辺元氏の「無」の哲学は、戦争中は「無」の独特な融通性によって侵略戦争に相応したし、一九四五年の冬から天皇制論のやかましかった頃には天皇制護持のた・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・鈴木文史朗の暴言に答えて「そんなことはできない」と答えたときのパロット氏の表情が見たかった。鈴木文史朗という新聞記者だったものがアメリカまで行ったあげくなおこういうものいいをするぐらいなのだから、日本人の残虐性は根づよいと思わずにいられまい・・・ 宮本百合子 「鬼畜の言葉」
・・・こんにちの世界で、どこの国の人民に対しても、原子兵器を使ってそこの重要都市を破壊し、住民をみなごろしにしてやるがいいというような暴言をはくものは、あからさまな戦争の火つけ人である。日本のわたしたちが国連を支持するとならば、それは国連の良心を・・・ 宮本百合子 「世界は求めている、平和を!」
・・・それなら俺たちはお前を法律で必ず殺してみせると暴言をはいておどかし、最後には、もしお前たちが事実をいうならば七年の刑が三分の一になって、又社会にでて活躍する時がくると誘惑」したと陳述した。八月十五日の深夜に、事実無根の自白をおこなった被告横・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
出典:青空文庫