・・・諸君、最上の帽子は頭にのっていることを忘るる様な帽子である。最上の政府は存在を忘れらるる様な政府である。帽子は上にいるつもりであまり頭を押つけてはいけぬ。我らの政府は重いか軽いか分らぬが、幸徳君らの頭にひどく重く感ぜられて、とうとう彼らは無・・・ 徳冨蘆花 「謀叛論(草稿)」
・・・ 衛生を重ずるため、出来る限りかかる不潔を避けようためには県知事様でもお泊りになるべきその土地最上等の旅館へ上って大に茶代を奮発せねばならぬ。単に茶代の奮発だけで済む事なら大した苦痛ではないが、一度び奮発すると、そのお礼としてはいざ汽車・・・ 永井荷風 「夏の町」
・・・したがって自分が最上と思う製作を世間に勧めて世間はいっこう顧みなかったり自分は心持が好くないので休みたくても世間は平日のごとく要求を恣にしたりすべて己を曲げて人に従わなくては商売にはならない。この自己を曲げるという事は成功には大切であるが心・・・ 夏目漱石 「道楽と職業」
・・・傑出を要求するの最上権利は、凡ての時において、われらの人物如何とわれらの仕事如何によってのみ決せらるべきである。 先生のこの主義を実行している事は、先生の日常生活を別にしても、その著作『日本歴史』において明かに窺う事が出来る。自白すれば・・・ 夏目漱石 「博士問題とマードック先生と余」
・・・ この権威を最後最上の権威であれかしと冀うのは、我々の欲望であって、一般に通ずる事実ではない。これを事実にしてくれるものは、相手と公平なる三者である。いやしくも二者の許諾を得ざるものは、どこまでも一家の批判に過ぎない。それが当然である。・・・ 夏目漱石 「文芸委員は何をするか」
・・・高さ十九丈壁の厚は三丈四尺、これを四階に分って、最上の一層にのみ窓を穿つ。真上より真下に降る井戸の如き道ありて、所謂ダンジョンは尤も低く尤も暗き所に地獄と壁一重を隔てて設けらるる。本丸の左右に懸け離れたる二つの櫓は本丸の二階から家根付の橋を・・・ 夏目漱石 「幻影の盾」
・・・正義は高き主を動かし、神威は、最上智は、最初愛は、われを作る。我が前に物なしただ無窮あり我は無窮に忍ぶものなり。この門を過ぎんとするものはいっさいの望を捨てよ。という句がどこぞで刻んではないかと思った。余はこの時すでに常・・・ 夏目漱石 「倫敦塔」
・・・技術に長ずるものあり、あるいは学問に長じ、あるいは政治に長ずる等、相互に争うべからざるものあるがゆえに、この事に長ずるものは、この事の長者としてこれを貴び、その業に長ずる者は、その業の長者としてこれに最上の栄誉をあたうるもまた、自然の理にお・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
一、世に為政の人物なきにあらず、ただ良政の下に立つべき良民乏しきのみ。為政の大趣意は、その国の風俗、人民の智愚にしたがい、その時に行わるべき最上の政を最上とするのみ。ゆえにこの国にしてこの政あり、かの国にしてかの政あり。国の・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・現在の下女下男を宜しからずと思わば、既往数年の事を想起し、其数年の間に如何なる男女が果して最上にして自分の意に適したるや、其者は誰々と指を屈したらば、おの/\一得一失にして、十分の者は甚だ少なかる可し。既往斯の如くなれば現今も斯の如し。将来・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
出典:青空文庫