・・・渋紙した顔に黒痘痕、塵を飛ばしたようで、尖がった目の光、髪はげ、眉薄く、頬骨の張った、その顔容を見ないでも、夜露ばかり雨のないのに、その高足駄の音で分る、本田摂理と申す、この宮の社司で……草履か高足駄の他は、下駄を穿かないお神官。 小児・・・ 泉鏡花 「茸の舞姫」
・・・ 彼は彼一流の方法で、やっつけるだけであった。 夜の二時頃であった。寝苦しい夏の夜も、森と川の面から撫でるように吹いて来る、軽い風で涼しくなった。 本田家は、それが大正年間の邸宅であろうとは思われないほどな、豪壮な建物とそれ・・・ 葉山嘉樹 「乳色の靄」
・・・それでも塩水選をかけたので恰度六斗あったから本田の一町一反分には充分だろう。とにかく僕は今日半日で大丈夫五十円の仕事はした訳だ。なぜならいままでは塩水選をしないでやっと反当二石そこそこしかとっていなかったのを今度はあちこちの農事試験場の・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
・・・日米週報社より、本田が広告を見て訪ねて来たことをしらす。一月 八日 セントルーク退院。 九日 の朝本田来る、みじめな様子。 の夜、よそに招かれた父を待って、マルセーユーのホールで話す。グランパ・・・ 宮本百合子 「「黄銅時代」創作メモ」
・・・ 本田道ちゃんの話 丁度昼で三越に食事に行こうとして玄関に出て来ると、いきなり最初の地震が来た。あぶないと云うので、広場の真中にかたまって三越の方を見ると、あの建物がたっぷり一尺右に左にゆれて居るのが見える。化粧レンガはバラバラ・・・ 宮本百合子 「大正十二年九月一日よりの東京・横浜間大震火災についての記録」
・・・一、Aの帰国に対する自分の心持、スリッパア、着物 一、かえった日 夜、あの心持、 ――○―― 一、何とない皆との不調和、彼の引こみ、食卓に来るおそさ、ひるま片づけのこと、本田の道ちゃんの来た夜、 一、自分仕・・・ 宮本百合子 「「伸子」創作メモ(一)」
・・・一行の批評も受けず、黙殺される。本田華子と結婚。 一九二〇年。『人間』正月号に「生命の冠」を発表。二月明治座に上演。翌月更に大阪浪花座に於て続演。はじめて戯曲家としての存在を認めらる。「津村教授」と二つ合せて戯曲集「生命の冠」を新潮社よ・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
出典:青空文庫