・・・自分は編輯責任者として尊厳冒涜という条項に該当するのだそうである。時刻が時刻なのですっかり腹がすき、自分が激しい食慾で弁当をたべているむかい側で清水は何も食べず、煙草をふかしている。そして自分は女房には絶対服従を要求しているが、工合がわるい・・・ 宮本百合子 「刻々」
・・・刑法は猥褻罪を規定しているから猥褻な本の取締りのためには、刑法のその条項を適宜に運用すべきである。もしかりに、漠然と公安を乱すおそれがある出版物はとりしまるというような新取締法をつくったならば、政府はよろこび勇んで、政府を批判し彼らの良心を・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・その中には、日本の民主化のために骨髄的諸項――たとえば労働組合の政治活動の自由・政党支持の自由・組合員であるからといって不当なとり扱いを蒙ることはないし、検挙をうけたりすることもないようにという条項など――が明文化された。ここまで、日本の労・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・婦人にとって重大なかかわりをもつ結婚、離婚、親権、財産権などの条項が変更される。親、戸主の権威が不幸の原因とさえなっていた結婚というものは、当事者である男女の互の意志によってとりきめられ、互の協力によって維持されるべきものとなろうとしている・・・ 宮本百合子 「世界の寡婦」
・・・第七項にその国の内政に干渉する権能を国連に与えてはならないという条項が厳存している。わたしたち日本の婦人は、どういう戦争にも日本人民として「使用」されることを断る権利をもっている。日本と米国そのものが人民の平和より何より先に戦略的な地点とし・・・ 宮本百合子 「世界は求めている、平和を!」
・・・もし民法で新しくきめられた婦人の社会的平等、人間らしい対等の権利を具体的なものにするなら、もうきょうの社会のなかで民法の条項が改正されただけでは意味がない。男と女とがその勤労によって生きなければならない労働に関係あるすべての法律で、男女は平・・・ 宮本百合子 「人間の結婚」
・・・民法の上でこれまで婦人が全く片手おちに、したがって非現実に扱われていた条項を、生活の実際に近く――男女平等のものに改正しようとされている。 先ず婚姻の問題が、「家」の問題でなくて、当事者である男女の問題として扱われるようになった。「家」・・・ 宮本百合子 「離婚について」
・・・人民の諸権利についての具体的条項は、漠然としてしか扱われていない。ましてや、この特異な日本憲法において、全人口の半ばを占める女子の社会的地位を、男女平等の人民として規定しているような条項は、一つもないのである。それは、明治というものの本質か・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫