或る洋画家のところへ、来月お金が入ることになった。ふだんその人は真面目に勉強しているのだが、或る理由からお金がちっともとれず、一緒に暮している女のひとと生活する必要のためには、夜、餉台の上まで低く電燈を引っぱり下してその下・・・ 宮本百合子 「百銭」
・・・「返す、きっと来月中にはかえす」「じゃそれまで待ちましょう。本当に、抑々あなたの云うことを真に受けたばっかりにこんなことになってしまった。――金はあるんですとも! 勿論あるのさ。それをかくして置いて私のをへつるんでしょう」「じゃ・・・ 宮本百合子 「街」
・・・そこで、本月と来月とはこれまでのいわばしきたりを変えて、一つちょっとした試みをして見たいと思う。何年の間でも読者に役に立つような読書プランというようなものを、即興的にではあるが、こしらえて見たい。 従来からも、日本は家族を中心においた風・・・ 宮本百合子 「若い婦人のための書棚」
出典:青空文庫