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・・・本丸の左右に懸け離れたる二つの櫓は本丸の二階から家根付の橋を渡して出入の便りを計る。櫓を環る三々五々の建物には厩もある。兵士の住居もある。乱を避くる領内の細民が隠るる場所もある。後ろは切岸に海の鳴る音を聞き、砕くる浪の花の上に舞い下りては舞・・・
夏目漱石
「幻影の盾」
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・・・ ゴーリキイは日本の「根付」を集めたことがあることやムッソリーニは婦人に出版権を与えていないこととかを話した。私は自分の本を贈り、短くそのときの自分の心持を話した。 モスクワへ帰ってから、あるところで或る知人に会ったら、その人は一つ・・・
宮本百合子
「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」