・・・鎌倉殿ことごとしや、何処にて舞いて日本一とは申しけるぞ。梶原申しけるは、一歳百日の旱の候いけるに、賀茂川、桂川、水瀬切れて流れず、筒井の水も絶えて、国土の悩みにて候いけるに、―― 聞くものは耳を澄まして袖を合せたのである。―・・・ 泉鏡花 「伯爵の釵」
・・・尤も僕と最初から理想を一にしている友人、今は矢張僕と同じ会社へ出ているがね、それと二人で開墾事業に取掛ったのだ、そら、竹内君知っておるだろう梶原信太郎のことサ……」「ウン梶原君が!? あれが矢張馬鈴薯だったのか、今じゃア豚のように肥って・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
・・・おれのとこでは、梶原剛氏に劇評たのんだのだが、どうです、あのおじいさん涙を流さんばかり、オリガの苦悩を、この女優に依ってはじめて知らされた、と、いやもう、流石のじいさん、まいってしまった。どれ、どれ、拝見。」背後のドアをそっと細めにあけ、舞・・・ 太宰治 「火の鳥」
出典:青空文庫