・・・『人民の文学』はそのころから一九三三年著者が検挙されるまでのわずか五年間ほどの間に書いた評論と、十二年とんで、一九四六年以降に書いた三編が入っている。 いまこの四冊の評論集をながめて、書評を書こうとし、非常に困難を感じる。なぜなら、この・・・ 宮本百合子 「巖の花」
・・・ナチスは、その火事を機会として、ドイツ中の共産党員、社会主義者、民主論者、平和論者、自由主義者、ユダヤ人の大量検挙をはじめたのであった。ヒトラーの手先がミュンヘンにも入ってきて、公共建物のすべての屋根に気味わるい卍の旗がひるがえることになっ・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・ 三鷹事件は、数名の共産党員を検挙して、その中に真犯人があるように宣伝されています。しかし、次の事実は事件の核心に関係しているにもかかわらず、商業新聞には発表されていません。それはこういう事実です。事件当夜、立川市の警察署長は立川国警か・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・けれども、バクチは千葉県の競馬場でも大騒動して検挙されているし、新宿もそれでさわいだ。五十円の宝くじを買って、百万円あたる、ということはバクチでないだろうか。勤労の所得と云えるかしら。政府が赤字やりくりのために思いついて、先ず五十円券をどっ・・・ 宮本百合子 「新しい文学の誕生」
・・・ 一九三二年の春から、うちつづく検挙と投獄がはじまった。その期間に作者はしばしば一人の人間、女としての自分の人生について考えずにいられなかった。人間の生活が現在にあるよりももっと条理にかなった運営の方法をもち、互に理解しあえる智慧とその・・・ 宮本百合子 「あとがき(『二つの庭』)」
・・・ この十数年間は、作者の生活波瀾もはげしく、度々の検挙や投獄で、三二年ごろ書いたソヴェト報告は四散したままにすてておかれた。このたび、幾人かの友人たちの熱心な協力によって、その大部分が集められた。そして、選集第八巻、九巻をみたすこととな・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第九巻)」
・・・『改造』に半年ほど連載して中絶した。検挙という外部からの理由でなしに中断した唯一の作品である。 いま考えれば、作者によって、あれだけ多量・広汎にソヴェト生活報告は執筆されているときであるから「ナルプ」は、啓蒙的な必要のためには、最もじか・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十巻)」
・・・その十三日前、宮本がスパイの手を通じて検挙された。ひどい拷問にあっていることがわかった。妻には着物のさし入れさえさせなかった。正月二日に山口県の田舎へ行って、宮本の母を東京につれて来て、面会を要求し、やっと生きている姿をたしかめた。以来十二・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第四巻)」
・・・一斉検挙をするということが出て居ります。それを読んで私は非常に悲しく思いました。なぜならば、この数年の間、若い者の生命は、どう大切にされたでしょう。若い者の純な心からの正義心や、若い者の伸びようとする希いや、そういうものが果して大事にされて・・・ 宮本百合子 「美しく豊な生活へ」
・・・わたしも一九三二年四月七日に検挙されて六月十八日ごろまで、警察にとめられていた。小林多喜二、宮本顕治は不自由な生活と活動の条件にかかわらずどこかでずっと無事に暮していた。同じ年の九月「コップ」の婦人協議会がそっくりつかまって、わたしはまた一・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
出典:青空文庫