・・・ったが病の酒癖とで、歌沢の師匠もやれば俳諧の点者もやると云う具合に、それからそれへと微禄して一しきりは三度のものにも事をかく始末だったが、それでも幸に、僅な縁つづきから今ではこの料理屋に引きとられて、楽隠居の身の上になっている。中洲の大将の・・・ 芥川竜之介 「老年」
・・・妻に早世され、娘を早く喪ってからは店を手代にゆずって僧にもならず一種の楽隠居で、半年は旅に半年は家居して暮すという境遇の俳人、談林派の宗匠であった。町人に生まれ、折から興隆期にある町人文化の代表者として、西鶴は談林派の自在性、その芸術感想の・・・ 宮本百合子 「芭蕉について」
・・・をやったが、彼を贔屓にしたエリザベス女王が亡くなると、前から心がけよくためておいた貯金と土地と家とをもって、昔かれが若く貧乏であった時、領主の鹿を売ったということでいたたまらなくした故郷の村に帰って、楽隠居の生涯をおくった。またゲエテはあれ・・・ 宮本百合子 「私の会ったゴーリキイ」
出典:青空文庫