・・・従ってこの曲った標柱は天然自然の滑稽であり皮肉である。これをそっくり写真に取れば、立派な、高級な漫画になるであろう。しかし安全も危険も実は相対的の言葉である。安全地帯の危険率も、危険地帯の安全率もゼロではない。 二・・・ 寺田寅彦 「KからQまで」
・・・これは数年前京都大学の地球物理学者たちがここにエアトヴァスの重力偏差計をすえ付けて観測した地点を示す標柱だそうである。年々に何百人という登山者のうちで、こんな柱の立っているのに気のつく人はいくらもないかもしれない。まして、その柱の意味を知る・・・ 寺田寅彦 「小浅間」
・・・さらにまた先生の全著書は先生の歩いた道の標柱である。すべての作は中心を流れるいのちに従って並べられている。これらの物に親しむのはいかなる意味においても我々を益し我々を幸福にするだろう。 和辻哲郎 「夏目先生の追憶」
出典:青空文庫