・・・ 権利思想の発達しないのは、東洋の婦人の時代遅れの点もあろうが、われわれはアメリカ婦人のようなのが、婦人として本性にかなった正常な姿ではなく、やはり社会の欠陥から生じた変態であって、われわれは早く東洋的な、理想的国家をつくって、東洋婦人・・・ 倉田百三 「愛の問題(夫婦愛)」
・・・かくする事によって観客はほんとうのパリとフランスとその人間とをその正常の姿において認識することができるであろう。 ルネ・クレールという作者の意図がどこにあるかはもちろん知るよしもないが、この発声映画は上記のような意味において私に発声映画・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・またもし蓄音機の盤を正常な速度の二倍あるいは半分の速度で回転させれば単に曲のテンポが変わるのみならず、音程は一オクテーヴだけ高くあるいは低くなってしまうのである。東京市民を驚かせるような強震が二日に一度三日に一度ずつ襲って来るとしたらどうで・・・ 寺田寅彦 「映画の世界像」
・・・たとえば東京で夏の夕方風がなげば、それは南がかった風の反対するような気圧傾度が正常の傾度に干渉している、すなわち太平洋のほうの気圧が比較的低下した、と考えていい場合が多いだろうと思われる。またたとえば広島へんで夏の夕方相当に著しい風が吹けば・・・ 寺田寅彦 「海陸風と夕なぎ」
・・・ この事実に対する認識の不足が、科学の正常なる進歩を阻害する場合がしばしばある。これは科学にたずさわるほどの人々の慎重な省察を要することと思われる。 最後にもう一つ、頭のいい、ことに年少気鋭の科学者が科学者としては立派な科学者でも、・・・ 寺田寅彦 「科学者とあたま」
・・・この事に関する誤解が往々正常なる科学の普及を妨害しているように見える。これは惜しむべきことである。 文章と科学「甲某の論文は内容はいいが文章が下手で晦渋でよくわからない」というような批評を耳にすることがしばしばある。・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・学校で教わった色々の六かしいことは大抵綺麗に忘れてしまったように思われる。正常の教程課目として教わったことで後年直接そのままに役に立ったことは比較的わずかで教程以外に直接先生方から受けた実例教育の外には自分の勝手で自修したことだけが骨身に沁・・・ 寺田寅彦 「科学に志す人へ」
・・・それ故にこの疑問を解くことは我国の学問の正常な発達のために緊要なことではないかと思われるのである。自分などはもとよりこの六かしい問題に対して明瞭な解答を与えるだけの能力は無いのであるが、ただ試みに以下にこの点に関する私見を述べて先覚者の教え・・・ 寺田寅彦 「学位について」
・・・の場合に一分子だけの厚さをもつものであるから、割れ目の間隙が 10-8 でなくてもミクロン程度のものならば、その間隙を液体で充填することによって割れ目の面における音波の反射をかなりまで防止し従って鐘の正常な定常振動を回復することができるであ・・・ 寺田寅彦 「鐘に釁る」
・・・ 数分の休息と三片のキャラメルで自分の体内の血液の成分が正常に復したと見えてすっかり元気を取りもどしてひと息に頂上までたどりつくことができた。 頂上にはD研究所のT理学士が天文の観測をするためにもう十数日来テントを張って滞在している・・・ 寺田寅彦 「小浅間」
出典:青空文庫