・・・そのとき楽隊が何か民謡風のものをやりはじめました。みんなはまた輪になって踊りはじめようとしました。するとデストゥパーゴが、「おいおい、そいつでなしにあのキャッツホイスカーというやつをやってもらいたいね。」 すると楽隊のセロをもった人・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・このほか一八三九年には、イエニーのために「民謡集成」という民謡集をこしらえた。若いカールは、そうしてイエニーへの思いを詩にたくしながら、法律・哲学・歴史の研究にうちこんで「すぐれた勉強」をつづけた。 このベルリン時代は、大学の課目以外の・・・ 宮本百合子 「カール・マルクスとその夫人」
・・・ 昔からの民謡を、ピオニェールも謡うだろう。「ステンカ・ラージンの岩」は伝説をもって、やっぱりヴォルガ河の崖にある。 農民作家たちは、いつの間にか、こういう細々した農村生活の外部的、或は内面の特別性を、固定したものとして扱い、過重評・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・火酒と教会と悲しい民謡があっただけだ。革命によって解放されたプロレタリアートが、一般に文化水準を高めて来たとき、はじめて、本ものの階級の文学をもつようになって来たのだ。未来にソヴェトのプロレタリア文化を護るもの、生産する者、そして、それを更・・・ 宮本百合子 「ソヴェト文壇の現状」
・・・そして順番にやわらかく、民謡の様な左の文句を口ずさむ。雪の降る日に小兎は、あかい木の実のたべたさに親の寝た間に山を出で城の門まで来は来たが赤い木の実は見えもせず路は分らず日は暮れる長い廊下のまどの下何・・・ 宮本百合子 「旅人(一幕)」
・・・ ロシアの古い民謡の中に、若い娘の婚礼の唄がいくつもある。陽気なのは一つもない。哀しそうに私が嫁に行くと云って何のよろこぶことがあろう!自由な楽しい私の若い日は終るのに! 実際、娘たちは編下げの髪を編みながら涙を・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・ロシアの古い民謡を実にどっさり知っていてそれを上手に唄い、祖父のいない晩の台所での団欒がはじまると、ふだんは太った重い体がどうしてああも不思議な魅力を示すかと驚くような踊りをおどった。特にその物語は、すべての聴きてを恍惚とさせる熱と抑揚とを・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
・・・ そして、これらの季節の思い出のどの一節にも、遠くにか近くにか手風琴と歌声とが響いていて、そこには微かにロシヤの民謡につきものの威勢のいい鋭いかけ声もきこえているのである。 宮本百合子 「モスクワ」
・・・い時分は孤児で乞食をして生き、レース編みを覚えてからはその勝れた腕前で食っていた祖母は、どん底の閲歴の中から不思議な程暖い慾心のない親切と人間の智慧のねうちに対する歪められない信頼とを身につけていた。民謡を上手に唄い、太った体つきのくせに魅・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
・・・ ステンカ・ラージンやプガチョフは、民謡の中にうたわれ、昔からロシアの勤労大衆に親しまれて来た農民革命家だ。彼等は、封建時代のロシアの辺土から起って、時の支配者に反抗した連中だ。が、一揆的な反抗は成功しないで捕われ、モスクワへ連れて来ら・・・ 宮本百合子 「ロシアの過去を物語る革命博物館を観る」
出典:青空文庫