・・・「神、その独子、聖霊及び基督の御弟子の頭なる法皇の御許によって、末世の罪人、神の召によって人を喜ばす軽業師なるフランシスが善良なアッシジの市民に告げる。フランシスは今日教友のレオに堂母で説教するようにといった。レオは神を語るだけの弁才を・・・ 有島武郎 「クララの出家」
・・・また花山法皇は御年十八歳のとき最愛の女御弘徽殿の死にあわれ、青春失恋の深き傷みより翌年出家せられ、花山寺にて終生堅固な仏教求道者として過ごさせられた。実に西国巡礼の最初の御方である。また最近の支那事変で某陸軍大尉の夫人が戦死した夫の跡を追い・・・ 倉田百三 「人生における離合について」
・・・ 麻のようなブロンドな頭を振り立って、どうかしたら羅馬法皇の宮廷へでも生捕られて行きそうな高音でハルロオと呼ぶのである。 呼んでしまってじいっとして待っている。 暫くすると、大きい鈍いコントルバスのような声でハルロオと答える。・・・ 森鴎外 「木精」
出典:青空文庫