・・・こうすれば、言葉と白墨の線とによって、大きさや角度や三角函数などの概念を注ぎ込むよりも遥かに早く確実に、おまけに面白くこれらの数学的関係を呑み込ませる事が出来る。一体こういう学問の実際の起原はそういう実用問題であったではないか。例えばタレー・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・ロマーシはそこで「人間に理性を注ぎ込む仕事」をし、ゴーリキイはそれを助けたのであったが、この村の生活で、二人は富農のために店をやかれ、危く殺されそうになった。農民、特に富農が「理性的に生活しようとする人をいかに執拗に憎悪する」かということ、・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・土地に居ついて来た農民は、どういう関係で日本の新しい経済機構に結ばれたかといえば、大部分はやはり昔ながらの小作百姓で、耕作の方法も、年貢を現物で払うということも、一家族がすべての労力を狭く小さい土地に注ぎ込む過小農業であるということも、ちっ・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
・・・「僕は人の空想に毒を注ぎ込むように感じるものだから。」「それがサンチマンタルなのだよ」と云いながら、綾小路は葉巻を取った。秀麿はマッチを摩った。「メルシイ」と云って綾小路が吸い附けた。「暖かい所が好かろう」と云って、秀麿は椅子を・・・ 森鴎外 「かのように」
出典:青空文庫