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・・・K博士の卓説の御利生でもあるまいが、某の大臣の夫人が紅毛碧眼の子を産んだという浮説さえ生じた。 何の事はない、一時は世を挙げて欧化の魔術にヒプノタイズされてしまった。が、暫らくして踊り草臥れて漸く目が覚めると、苦々しくもなり馬鹿々々しく・・・
内田魯庵
「四十年前」
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・・・井戸に毒を入れるとか、爆弾を投げるとかさまざまな浮説が聞こえて来る。こんな場末の町へまでも荒して歩くためには一体何千キロの毒薬、何万キロの爆弾が入るであろうか、そういう目の子勘定だけからでも自分にはその話は信ぜられなかった。 夕方に駒込・・・
寺田寅彦
「震災日記より」