・・・それとも海底噴火山の爆発かな。 気がついて見ると、僕は、書斎のロッキング・チェアに腰をかけて St. John Ervine の The Critics と云う脚本を読みながら、昼寝をしていたのである。船だと思ったのは、大方椅子の揺れる・・・ 芥川竜之介 「MENSURA ZOILI」
・・・ 大波に漂う小舟は、宙天に揺上らるる時は、ただ波ばかり、白き黒き雲の一片をも見ず、奈落に揉落さるる時は、海底の巌の根なる藻の、紅き碧きをさえ見ると言います。 風の一息死ぬ、真空の一瞬時には、町も、屋根も、軒下の流も、その屋根を圧して・・・ 泉鏡花 「雪霊続記」
一 大正十二年のおそろしい関東大地震の震源地は相模なだの大島の北上の海底で、そこのところが横巾最長三海里、たて十五海里の間、深さ二十ひろから百ひろまで、どかりと落ちこんだのがもとでした。 そのために・・・ 鈴木三重吉 「大震火災記」
・・・で一粒ずつ拾い集めた砂金、竜の鱗、生れて一度も日光に当った事のないどぶ鼠の眼玉、ほととぎすの吐出した水銀、蛍の尻の真珠、鸚鵡の青い舌、永遠に散らぬ芥子の花、梟の耳朶、てんとう虫の爪、きりぎりすの奥歯、海底に咲いた梅の花一輪、その他、とても此・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
・・・敵の軍艦が突然出てきて、一砲弾のために沈められて、海底の藻屑となっても遺憾がないと思った。金州の戦場では、機関銃の死の叫びのただ中を地に伏しつつ、勇ましく進んだ。戦友の血に塗れた姿に胸を撲ったこともないではないが、これも国のためだ、名誉だと・・・ 田山花袋 「一兵卒」
・・・昔のジュール・ヴェルヌの海底旅行のようなものもある。また近代のではウェルズの「時の器械」とか「世界間の戦争」のようなものもある。いずれも科学的未来記のようなものとして、通俗的の興味は多分にあるであろうが、ほんとうの科学的精神といったようなも・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・ 島が生まれるという記事なども、地球物理学的に解釈すると、海底火山の噴出、あるいは地震による海底の隆起によって海中に島が現われあるいは暗礁が露出する現象、あるいはまた河口における三角州の出現などを連想させるものがある。 なかんずく速・・・ 寺田寅彦 「神話と地球物理学」
・・・それは地震の波が地殻を伝播する時に、陸地を通る時と海底を通る時とでその速度に少しの相違がある、そういう事実を説明すべき一つの理論の糸口のようなものであった。 とにかく一生懸命で絵を描いている途中でどうしてこんな考えが浮き上がって来たもの・・・ 寺田寅彦 「断片(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・ジュール・ヴェルヌの「海底旅行」はこれに反して現実の世界における自然力の利用がいかに驚くべき可能性をもっているかを暗示するものであった。それから四十年後の近ごろになって新聞で潜航艇ノーチラスの北極探検に関する記事を読み、パラマウント発声映画・・・ 寺田寅彦 「読書の今昔」
・・・ 近ごろは海の深さを測定するために高周波の音波を船底から海水中に送り、それが海底で反響するのを利用する事が実行されるようになった。これを研究した学者たちが、どの程度まで上記の問題に立ち入ったか私は知らない。しかしこの鸚鵡石で・・・ 寺田寅彦 「化け物の進化」
出典:青空文庫