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・・・蕪村の句多からずといえども、楊州の津も見えそめて雲の峰雲の峰四沢の水の涸れてより 旅意二十日路の背中に立つや雲の峰のごとき皆十分の力あるを覚ゆ。五月雨は芭蕉にも五月雨の雲吹き落せ大井川 芭蕉五月雨・・・
正岡子規
「俳人蕪村」
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・・・ 午後、机の上の、さむさでいじけ、咲かないまま涸れた薔薇をぼんやり見ていると、玄関で誰か「今日は」と呼ぶ声がした。丁度使に出ていたので、立ちかけたが、どうも声が変な調子で、物乞いらしく感じられる。立ったまま躊躇していると、エーが、彼の部・・・
宮本百合子
「静かな日曜」