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・・・と駄目をおし、「むかし嵯峨のさくげん和尚の入唐あそばして後、信長公の御前にての物語に、りやうじゆせんの御池の蓮葉は、およそ一枚が二間四方ほどひらきて、此かほる風心よく、此葉の上に昼寝して涼む人あると語りたまへば、信長笑わせ給へば、云々」とあ・・・
寺田寅彦
「西鶴と科学」
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・・・しまいには紫川の東の川口で、旭町という遊廓の裏手になっている、お台場の址が涼むには一番好いと極めて、材木の積んであるのに腰を掛けて、夕凪の蒸暑い盛を過すことにした。そんな時には、今度東京に行ったら、三本足の床几を買って来て、ここへ持って来よ・・・
森鴎外
「鶏」