・・・ この間、プロレタリア作家の徳永直と、これはプロレタリア短歌を専門とする渡辺順三とが、東北飢饉地方を見学に行った。私は断片的にではあるがいろいろ感銘のふかい話を聞いたが、その中で特に心に銘じたことが一つあった。それはあちらに行って実際に・・・ 宮本百合子 「村からの娘」
・・・同じ場所から攻め入った柳川の立花飛騨守宗茂は七十二歳の古武者で、このときの働きぶりを見ていたが、渡辺新弥、仲光内膳と数馬との三人が天晴れであったと言って、三人へ連名の感状をやった。落城ののち、忠利は数馬に関兼光の脇差をやって、禄を千百五十石・・・ 森鴎外 「阿部一族」
渡辺参事官は歌舞伎座の前で電車を降りた。 雨あがりの道の、ところどころに残っている水たまりを避けて、木挽町の河岸を、逓信省の方へ行きながら、たしかこの辺の曲がり角に看板のあるのを見たはずだがと思いながら行く。 人通・・・ 森鴎外 「普請中」
出典:青空文庫