・・・国に一鉱山あるでなく、大港湾の万国の船舶を惹くものがあるのではありません。デンマークの富は主としてその土地にあるのであります、その牧場とその家畜と、その樅と白樺との森林と、その沿海の漁業とにおいてあるのであります。ことにその誇りとするところ・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・大川は港湾労働者で、仲仕をしていた。おかみさんはそれを聞くと、お前の母に少し気兼ねしたように、抱いていた自分の子供に頬ずりをした。 窪田さんはこう云っているの。――監獄では大体にやっぱり労働者出身のものが、******して、****・・・ 小林多喜二 「母たち」
・・・ 四 験潮旅行 明治三十七年の夏休みに陸中釜石附近の港湾の潮汐を調べに行ったときの話である。塩釜から小さな汽船に乗って美しい女学生の一行と乗合せたが、土用波にひどく揺られてへとへとに酔ってしまって、仙台で買って・・・ 寺田寅彦 「夏」
出典:青空文庫