・・・国語は満点じゃ。」醤油屋の坊っちゃんは、あどけない声で奥さんにこんなことを云いながら、村へ通じている県道を一番先に歩いた。それにつづいて、下車客はそれぞれ自分の家へ帰りかけた。「谷元は、皆な出来た云いよった。……」こういう坊っちゃんの声・・・ 黒島伝治 「電報」
・・・すると翌日の試験には満点百のものをようよう十四点だけもらった。十四点とは余り例のない事だ。酒も悪いが先生もひどいや。〔『ホトトギス』第二巻第九号 明治32・6・20〕 正岡子規 「酒」
・・・ 小説の父親の考は、では、賑やかなところと云えば、どこを指したら満点なのだろうかというところまではふれられていない。だがその作品からはなれて試験官は、どこを念頭においてその質問を出したのだろうかという疑問が私の心にはのこされたのであった・・・ 宮本百合子 「新入生」
・・・ 勿論、そうだからといって、一つ一つの絵がみんな満点といえないのは明かだ。例えば、技術の不足からうんと人間の顔のかさなった大きな集団を扱ったものは、より少く効果的だ。又、或るスローガンをぶつけて人々の意識を階級的に燃焼させる必要のあ・・・ 宮本百合子 「プロレタリア美術展を観る」
出典:青空文庫