・・・こう云ってお茶を濁す。穏かな岡村も顔に冷かな苦笑を湛えて、相変らず元気で結構さ。僕の様に田舎に居っちゃ、君の所謂時代の中心から離れて居るからな、何も解らんよ。とにかくここでは余り失敬だ。君こっちにしてくれ給え。こういって岡村は片手に洋燈を持・・・ 伊藤左千夫 「浜菊」
・・・ しかし、これはおかしい程売れず、結果、学校、官庁、団体への大量寄贈でお茶を濁すなど、うわべは体裁よかったが、思えば、醜態だったね。だいいち、褒めるより、けなす方が易しいのでんで、文章からして「真相をあばく」の方が、いくらか下品にしろ、・・・ 織田作之助 「勧善懲悪」
・・・ あんまり川を濁すなよ、 いつでも先生言うでないか。一、二い、三。」「あんまり川を濁すなよ、 いつでも先生言うでないか。」 その人はびっくりしてこっちを見ましたけれども、何を言ったのかよくわからないというようすでした。そ・・・ 宮沢賢治 「風の又三郎」
・・・ あんまり川を濁すなよ、 いつでも先生云うでなぃか。一、二ぃ、三。」「あんまり川を濁すなよ、 いつでも先生云うでなぃか。」その人は、びっくりしてこっちを見たけれども、何を云ったのか、よくわからないというようすだった。そこでぼ・・・ 宮沢賢治 「さいかち淵」
・・・ 細そい木片ですきまなくせせって、せっかく澄んだのを濁すのが面白うてのう。 とは申せ上手に濁す濁さぬはかき廻し手の器用不器用によるのじゃが……法 どぶのわるさも自らの落ちぬ限りでのう、泥深くてやたらともぐり込むそうでござるから・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
出典:青空文庫