・・・今では余熱が冷めてホテルのダンス場も何カ月ぶりかで再び開かれたが、さしもに流行したダンス熱は一時ほどでなくなった。一時は猫も杓子も有頂天になって、場末のカフェでさえが蓄音機のフォックストロットで夏の夕べを踊り抜き、ダンスの心得のないものは文・・・ 内田魯庵 「四十年前」
・・・その実は君の余熱に感じて伝染したるものというも可なり云々と、利口に述べ立てられたらば、長者の輩も容易にこれに答うること能わずして、あるいはひそかに困却するの意味なきに非ざるべし。 その趣は、老成人が少年に向い、直接にその遊冶放蕩を責め、・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
・・・胸は何だかおかしく熱り頬にはつめたい涙がながれていました。 ジョバンニはばねのようにはね起きました。町はすっかりさっきの通りに下でたくさんの灯を綴ってはいましたがその光はなんだかさっきよりは熱したという風でした。そしてたったいま夢である・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
出典:青空文庫