・・・ 私たちは、爆笑した。「ばかばかしい。」佐伯は、障子をがらりと開けて転げ込むようにして部屋へはいった。私も、おなかを抑えて笑い咽びよろよろ部屋へ、はいってしまった。 薄暗い八畳間の片隅に、紺絣を着た丸坊主の少年がひとりきちんと膝・・・ 太宰治 「乞食学生」
・・・数分間ごとに爆笑と拍手の嵐が起こる。その笑声が大抵三声ずつ約二、三秒の週期で繰返されて、それでぱったり静まるのである。こうした場合に人間の笑うのにはただ一と声笑っただけではどうにも収まらないものらしく、それかと云って十声とつづけて笑うことは・・・ 寺田寅彦 「高原」
・・・もっぱら談話をリードしているその中の一人が何か二言三言言ったと思うと他の二人が声をそろえて爆笑する、それに誘われて話し手自身も愉快そうに大きく笑っている。三四秒ぐらいの週期で三声ぐらい繰り返して笑うと黙ってしまう。また二言三言何か言ったと思・・・ 寺田寅彦 「三斜晶系」
出典:青空文庫