・・・ エリカ・マンには、女性にめずらしい特長があり、疲れを知らない行動力、強靭な運動神経がある。ヘンリー・フォードが催したヨーロッパ早まわり競争に参加して、十日間に六千マイルを突破して一等になり、フォードより自動車を一台おくられたことがある・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・ 外国の人も日本文化の特長を手早くとりまとめようとするとき、こういう特長をとらえたことは、卑俗な日本の輸出品が、やすい香水入線香にフジヤマ、ゲイシャ、サクラなどという名をつけていたのでもわかる。戦争中、日本の超国家主義者たちは、ヒットラ・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・なるほど、現在有名になっている女優一人一人について見れば、容貌にしろ髪の色、声にしろ感情表現の身振りにしろ特長がなくはないのだが、男との相対において現われて来ると、性格的なものをはっきり生かそうというスター・システムの焦慮にもかかわらず、感・・・ 宮本百合子 「映画の恋愛」
・・・裁判長が、高岡只一がモスコウの共産大学にいた間に何をしていたかと一言云ったらモスコーの学生生活の一番の特長は、それがいつでも大衆の活々した日常生活と結びついているところにあると云うはじまりで、細かくソヴェト同盟の失業と搾取のない労働者の生活・・・ 宮本百合子 「共産党公判を傍聴して」
・・・ガルボは、いい女優の特長として幅があるし、流動的だし、含蓄があるし、私は好きな女ですが、この平凡で謂わばセンチメンタルな映画を見て、私はどっち道不幸なめぐり合わせを描写して涙をこぼさせるようなのは、すきでないと感じました。この私の心持から或・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ヴォルフが細君などの入ったものをとり、集団の美を把えぬところは一つの特長ですね。しかしライカカメラの技術としては最高の由。今夜は鈴子さんが国へかえるので戸塚の夜店を歩き鈴虫を買ってかえったところ、今もって鳴かぬ、雄ではないのだろう雌だろう。・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・ 見て知らん振 銀座 雨もよい weekday の午後一時すぎ むこうから特長のある石川湧の鳥打帽 タバコをふかしつつ コバルト色のコート 傘の若い女と並んで歩いて来る、女私の前を通すぎるとき 傘を傾けて顔をかくして・・・ 宮本百合子 「心持について」
・・・これらの特長はこの座談会を流れて一貫し、プロレタリア文学の新しい展開への可能を暗示している。 この座談会の席上で、島木氏や徳永氏によってプロレタリア文学作品の一つの発展的タイプとして「プロレタリア的な単純な明朗性を持った作品」「単純な、・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・ 女の言葉の特長 ねーえ と引っぱってというが如し だに おいでた だかね 居ますんね〔欄外に〕ジンゲル Roll accident adapt angel そんな字が見える 天使、天子と・・・ 宮本百合子 「一九二七年春より」
・・・ 新日本文学に属する民主的立場の作家の活動は、それぞれの作家の特長にしたがってだんだん流動してきました。毎日新聞の出版文化賞に「播州平野」と「風知草」とが当選したことは、その作家一人の問題ではなくて、民論が一方で坂口安吾氏の文学を繁昌さ・・・ 宮本百合子 「一九四七・八年の文壇」
出典:青空文庫