・・・p.259○彼等が慾求するのは 慾望の充足を希うがためのみならず、それと同時にまた慾望を拒否された堕地獄の状態をも希うがためである。○対立は対立を生むのである。p.259○狂暴な循環の中に彼らの意欲の旋風は渦巻いている。p.26・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
・・・第二次大戦はファシズムの非人間性と狂暴な破壊性についておそろしい教訓を与えました。近代戦争の無制限な戦線拡大は、戦争の非人道性をあらゆる人におもい知らせました。戦争を嫌悪する心、平和な状態で平和な人民生活を安定させたいという願いは、第二次大・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・殊に、社会生活の実力に乏しい女性が、多くの場合その結果を自己の力では到底回収し得ない、或る瞬間、或る期間の必死な狂暴性で事を為すことは、悲惨という以上に感ぜられる。〔一九二一年十二月〕・・・ 宮本百合子 「深く静に各自の路を見出せ」
・・・彼女が、何とも云えず狂暴に、何とも云えず苦しさに混乱して居る様子が、自分には、云いようなく辛かった。和らぎたい心持は、溢れる程胸に満ちて居る。而も、私は仕事のことを思うと、もう親にも良人にも代えられない献身を覚え、その、わが命を守る為に、涙・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・苦痛が嵩じて「一種冷やかな狂暴に生れ変って来ると、今度は若い」ゴーリキイ自身が「獣のように荒れくるった。そして後から胸の痛い程恥しく思う。」 心に痛みをもってゴーリキイは店から抜け出し、悠大なヴォルガの落日を眺めた。本で知った他の都会の・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
彼と別れて居ると云う事は、日を経るに連れて、一層辛いものに成って来た。 二人が一緒に居た時には、彼女自身に想像も出来なかった、何かひどく狂暴な力が、嵐のように捲起って、時には、一夜の安眠をさえ与えない程、若い健な、豊饒・・・ 宮本百合子 「無題(三)」
・・・丁度、美術愛好者が、古代ギリシャ建築の明美な柱列を見た時、心を打れ、何はともあれ、アカンサスの葉で飾られた精緻な柱頭と、単純で力強い柱台とに注意を向けた如く、学徒が、狂暴な程、雑多な原質の目覚める青年期、不思議に還元的色彩を帯びる更年期を特・・・ 宮本百合子 「われを省みる」
・・・最も狂暴なタイラントや最も放恣な遊蕩児のしそうなことまでも。もちろん私は気づくとともにそれを恥じ自分を責めます。しかし一度心に起こった事はいかに恥じようとも全然消え去るという事がありません。時には私は自分の心が穢ないものでいっぱいになってい・・・ 和辻哲郎 「ある思想家の手紙」
出典:青空文庫