・・・の人間価値を評価し、彼ほど衷心から戦争の犯罪性を指摘するなら、人民階級の独裁ということと、金と権力をひっくるめて独占するということとの間にあるちがいについても学ぼうとするだろう。――これはもとより、わたしが「道標」の前半を、どのように書くこ・・・ 宮本百合子 「心に疼く欲求がある」
・・・けれども、たとえばスタインベックのダイナミックな手法が、彼の旅行記の中でソヴェト社会の建設の姿を典型的につかむことに成功しているにしろ、彼がブルジョア・デモクラシーとプロレタリアートの階級的独裁の本質的なちがいを理解せず、自国の金融資本の独・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ラジオはその時の政府によって官僚統制され、また天降りの独裁放送を行うことを思えば、政府の放送事業法案に対する反対はきわめて強い現実的な根拠をもっている。 一九四六年に組織された現在の放送委員会は日本のラジオの民主化にたいして負わされた責・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・必ず当時の支配階級の文化が、独裁的な形態をとって現れるのが常である。有名な源氏物語は藤原時代の封建貴族文化の精華であるといわれているが、あの作品は同じ藤原時代に文盲ではだしで一度び飢饉が来ると道ばたに倒れて飢え死んだ庶民のいかなる心持ちをも・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・とか「神の支配するファシスト独裁に賛成だ」などと話して、当時ナチス・ドイツのファシズムに反対だったアメリカの輿論からはじき出された。けれどもこんにちでは事情がちがっている。共産主義の敵でさえあれば、それが何であろうと歓迎せずにいられなくなっ・・・ 宮本百合子 「再武装するのはなにか」
・・・ 共産主義的独裁社会形態における文化ということは、いまのソヴェトのように社会主義的民主主義の社会における文化ということでしょうか。こういう比較は現実的にこんにちの資本主義国内でどのような文化発展の可能性が保たれているかということと具体的・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
・・・日本に純粋な資本主義独裁はないから、従ってファッシズムもない、という主張をもった社会時評である。他の一つは「プロレタリア文化戦線の見透し」北厳二郎氏である。限られた枚数の中で、詳細にふれることは不可能であるが、前者において、われわれがそれを・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・プロレタリアート独裁のソヴェトは、独特なプロレタリアート芸術とその利用法によって、社会主義社会の実生活を表現するとともに、新しい時代に生きるソヴェトの大人と、未来のスメーナである子供とに、いきいきした階級的教育を与えている。 イギリスの・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
・・・ その日のために、ロシアのプロレタリアートと農民は、監獄、銃殺、流刑と、あらゆる迫害を徹して闘い抜き、遂に一九一七年十一月七日、働く者の国、プロレタリア独裁のソヴェト政権を確立したのです。 この地球はじめての人間らしい憲法がきめられ・・・ 宮本百合子 「ソヴェト同盟の婦人と選挙」
・・・これは、ドイツの封建的残滓の上に発生した封建的独裁に抗し、近代民主主義の基本的人権を主張した運動であった。が、日本では、プロレタリア文学運動をうちこわした治安維持法への恐怖から、人民戦線運動の骨子である社会性、近代社会の民主性の主張をぬきと・・・ 宮本百合子 「誰のために」
出典:青空文庫