・・・「ああ、日帰りでやって来たよ。生体解剖の話や何かして行ったっけ。」「不愉快なやつだね。」「どうして?」「どうしてってこともないけれども。……」 僕等は夕飯をすませた後、ちょうど風の落ちたのを幸い、海岸へ散歩に出かけること・・・ 芥川竜之介 「彼」
・・・今眼が覚めたかと思うと、また生体を失う。繃帯をしてから傷の痛も止んで、何とも云えぬ愉快に節々も緩むよう。「止まれ、卸せ! 看護手交代! 用意! 担え!」 号令を掛けたのは我衛生隊附のピョートル、イワーヌイチという看護長。頗る背高で、・・・ 著:ガールシンフセヴォロド・ミハイロヴィチ 訳:二葉亭四迷 「四日間」
・・・……私には牛肉を食っていながら生体解剖に反対している人たちの心持ちがわからなかった。……人間の平等を論じる人たちがその平等を猿や蝙蝠以下におしひろめない理由がはっきりわからなかった。……普通選挙を主張している友人に、なぜ家畜にも同じ権利を認・・・ 寺田寅彦 「芝刈り」
・・・フランドン農学校の畜産学の先生は、毎日来ては鋭い眼で、じっとその生体量を、計算しては帰って行った。「も少しきちんと窓をしめて、室中暗くしなくては、脂がうまくかからんじゃないか。それにもうそろそろと肥育をやってもよかろうな、毎日阿麻仁を少・・・ 宮沢賢治 「フランドン農学校の豚」
出典:青空文庫