・・・しかるに今日においては国法は男子の利益においてきめられ社会は母性と、産児と、未亡人とを保護しない。妊娠すれば職を失わなくてはならぬ有様である。しかも共稼ぎしなくては子どもを養育できない。男子は独立して妻子を養い得ぬのが普通となり、といって婦・・・ 倉田百三 「婦人と職業」
・・・ 本誌の、この号には食糧問題、労働問題、法律上の諸問題、生活再建の市民的技術上の問題、再婚問題、産児制限の諸問題が、特輯として扱われている。 これらの題目のうちで、過去二十年間、日本の婦人雑誌が扱ったことのないというトピックが、只の・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・パロット氏「そんなことは出来ない。産児制限と国の工業化が解決の一助だろう」。重ねて鈴木文史朗は「大家族をもっている月給取りは子供の少い上役より月収が多い。これは一面子供多産の奨励のようなものだ」といっているのである。読売新聞の時評はいち早く・・・ 宮本百合子 「鬼畜の言葉」
・・・女性の感情の深いところから生じる産児制限に対する質疑を暗示している点、自分と共通な或るものを筆者も持たれていると思い興味をもった。あれは未だ纏った考えと云うより、一つの暗示にすぎないから、女性中心思想によって敷衍された結論に猶考える余地があ・・・ 宮本百合子 「是は現実的な感想」
・・・ 抑々、産児制限などと云う問題は、総論として一朝一夕に可否を断定し得ないものではありますまいか。それを現在の社会状態に鑑みて是とする者、愛国主義、或は軍備主義の尊重から、国家滅亡論として極端に拒絶する者。又、実際、それに対する箇人の道徳・・・ 宮本百合子 「男女交際より家庭生活へ」
・・・ 断種協会は、この社会の不幸である悪質の病気、アルコール中毒等の遺伝から子孫を防衛するために、そういう変質者、病人の断種を人道上の常識としようとする科学的立場によって、組織された会である。 産児制限を、不道徳であると婦人科の女医師で・・・ 宮本百合子 「花のたより」
・・・ 生めよ、ふやせよと叫ばれた婦人が、きょうは、産児制限をすすめられていることについても、婦人はいいしれない屈辱を感じます。売笑婦、浮浪児が増大するばかりで、六・三制の予算は削られ、校舎が足りないのに、野天で勉強する子供らのよこで、ダンス・・・ 宮本百合子 「婦人大会にお集りの皆様へ」
・・・例をアメリカにおける産児の制限の場合にとって見よう。所謂キリスト教の精神によって、アメリカは従来サンガー夫人たちの所論を公然とは認めていなかった。ただ、必要な場合の医療的処置としてうけ入れていたのであったが、昨今は急に産児を制限する範囲のこ・・・ 宮本百合子 「夜叉のなげき」
・・・きょう、やかましい産児制限のことも、こうして、住む家をもたず、家事負担から解放されない若夫婦が、初々しい親となってゆく喜びさえ節約して、食べられない俸給に耐えてゆくための一条件のようでさえある。今日、産児制限は、優生学の立場からというよりは・・・ 宮本百合子 「離婚について」
・・・日本の人口問題は重大である、として産児制限の輪は、生めよ、殖えよ、と云った権力のその面前で闘わされている。五百円は五人家族「標準」といわれている。女性の性そのものの自然さ、高貴ささえこのように方便によって翻弄されるとき私たち婦人の胸にはほと・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫