・・・ 憲兵にとって、一枚の贋造紙幣が発見されたということは、なんにも自分の利害に関する問題ではなかった。発覚されない贋造紙幣ならば、百枚流通していようが、千枚流通していようが、それは、やかましく、詮議立てする必要のないことだった。しかし一度・・・ 黒島伝治 「穴」
・・・しかし古い立派な人の墓を掘ることは行われた事で、明の天子の墓を悪僧が掘って種の貴い物を奪い、おまけに骸骨を足蹴にしたので罰が当って脚疾になり、その事遂に発覚するに至った読むさえ忌わしい談は雑書に見えている。発掘さるるを厭って曹操は多くの偽塚・・・ 幸田露伴 「骨董」
・・・詐偽の全体が発覚すまいものでもない。そこで芝居へ稽古に行く。買物に出る。デルビイの店へも、人に怪まれない位に、ちょいちょい顔を出して、ポルジイの留守を物足らなく思うと云う話をも聞く。ついでに賭にも勝って、金を儲ける。何につけても運の好い女で・・・ 著:ダビットヤーコプ・ユリウス 訳:森鴎外 「世界漫遊」
・・・ ファシストの地下組織が千葉で発覚しています。千葉のファシスト地下組織は、もと上海特務機関中尉である大島軍司という人物を中心にして、千葉県知事、市長、成田山の僧正、千葉市警察署長、その他各地の警察署長とれんらくして、大島は警察パス、外務・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ 五ヵ年計画まではソヴェト唯一の炭坑区だったドンバスで、一九二八年大陰謀が発覚した。一九三五年になるとドンバスからは一塊の石炭さえ産出しないように技術的な破壊が企てられていた。それは誰の仕業であったろうか? ドンバスに外国資本が投資され・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ 教員の生活保証 事変以来、小学教員の不足と、その不足を至急に補うことから生じる質の低下とは心ある者を考えさせていたが、偶小学校教員の万引横領事件が発覚したということである。 これは勿論最も不幸な例外であろ・・・ 宮本百合子 「女性週評」
・・・ドン・バスの方はその前年全ソヴェト同盟のみならず世界の注目をひいたドイツ技師を筆頭とする国際的生産破壊計画事件が発覚したばかりであった。自分たちがモスクワへ着いたのはその年の十二月。革命十周年祝祭の歓びの亢奮とドン・バス事件に対する大衆の憤・・・ 宮本百合子 「石油の都バクーへ」
・・・ブルジョア・ジャーナリズムさえ、その規模の大さと国際的計画とで、驚きを示さずにいられなかったソヴェトにおける産業党の大陰謀が発覚した。 これまでだって、ソヴェトのプロレタリアートは幾度か国際的な陰謀によって生産妨害を受け、それを撃退して・・・ 宮本百合子 「ソヴェト文壇の現状」
・・・婦女の身としてひそかに見舞うのは、よしや後日に発覚したとて申しわけの立たぬことでもあるまいという考えで、見舞いにはやったのである。女房は夫の詞を聞いて、喜んで心尽くしの品を取り揃えて、夜ふけて隣へおとずれた。これもなかなか気丈な女で、もし後・・・ 森鴎外 「阿部一族」
・・・ 丁度その頃この土地に革命者の運動が起っていて、例の椰子の殻の爆裂弾を持ち廻る人達の中に、パアシイ族の無政府主義者が少し交っていたのが発覚した。そしてこの Propagande par le fait の連中が縛られると同時に、社会主義・・・ 森鴎外 「沈黙の塔」
出典:青空文庫