・・・いまでは、どうやら、朝太郎も、皆様のおかげで、もの書いてお金いただけるようになって、わたくしは、朝太郎が、もう、どんな、ばかをしても、信じている。むかし、あれの父をあんなに大事にかばって呉れたこと思えば、あの子が、ありがたくて、もったいなく・・・ 太宰治 「十五年間」
・・・此の際、本県出身の芸術方面に関係ある皆様にお集り願って、一夜ゆっくり東京のこと、郷里の津軽、南部のことなどお話ねがいたいと存じますので御多忙中ご迷惑でしょうが是非御出席、云々という優しい招待の言葉が、その往復葉書に印刷されて在り、日時と場所・・・ 太宰治 「善蔵を思う」
・・・ケサノコノ走リ書モマタ、純粋ノ主観的表白ニアラザルコトハ、皆様承知。プンクト、ナドノ君ノ気持チト思イ合セヨ。急ニ書キタクナクナッタ。 スベテノ言、正シク、スベテノ言、嘘デアル。所詮ハ筏ノ上ノ組ンヅホツレツデアル、ヨロメキ、ヨロメキ、君モ・・・ 太宰治 「創生記」
・・・ざいまして、本当に私は、よくぞそれがしを思い出して下さった、光栄だと思って居りますくらいで、しかし、それにつけても、これは犯罪、いや、犯罪などと極端な事は言わずとも、私ごとき者が、神聖なるべき教育会の皆様に講演するとは、これは、いかにしても・・・ 太宰治 「男女同権」
・・・と黒いマント着て巷をうろつく師走にいたり、やっと金策成って、それも、三十にちかき荷物のうち、もっとも安直の、ものの数ならぬ小さい小さいバスケット一箇だけ、きらきら光る真鍮の、南京錠ぴちっとあけて、さて皆様の目のまえに飛び出したものは、おや、・・・ 太宰治 「二十世紀旗手」
・・・いまでは、どうやら、朝太郎も、皆様のおかげで、もの書いてお金いただけるようになって、わたくしは、朝太郎が、もう、どんな、ばかをしても、信じている。むかし、あれの父をあんなに大事にかばって呉れたこと思えば、あの子が、ありがたくて、もったいなく・・・ 太宰治 「火の鳥」
・・・ 年取って薄倖な亮の母すらも「亮は夭死はしたが、これほどまでに皆様から思っていただけば、決してふしあわせとは思われない」とそう言っている。私もほんとうにそう思う。 これだけの好意を人から寄せられるには、やはりよせられるだけのある物が・・・ 寺田寅彦 「亮の追憶」
皆様の現場録音を拝見して、きょうの真面目な若い女性の心持に同感いたしました。いくつかの感想もあります。女子職員の声に出されていた質問とその答について順々にとりあげてゆきましょう。 (1)の男女交際ということも、男と女と・・・ 宮本百合子 「悔なき青春を」
私は一九二七年から三〇年までソ連におりました。いまから考えれば大変古いことで、ちょうど第一次五ヵ年計画が始まったばかりのところです。ですから、皆様の方が新しい今日のソヴェトについては十分御存じのことでしょう。何を見ました、・・・ 宮本百合子 「社会と人間の成長」
・・・老近侍 皆様御自分にお祈りなされ、御自分におすがりなされ。世の中に自分ほどたよりになるものはござらぬわ。 法王様も――又陛下も、御自分の御力を偉大なものだとお信じなされたればこそこの事も出来たのでのう。三人の女は一っかたまり・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
出典:青空文庫