・・・一、官の学校は、官とその盛衰をともにして、官に変あれば校にも変を生じ、官、斃れば校もまた斃る。はなはだしきは官府一吏人の進退を見て、学校の栄枯を卜するにいたることあり。近くその一例をあげていわんに、旧幕府のとき開成所を設けたれども、まっ・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・一身一家の不始末はしばらくさしおき、これを公に論じても、税の収納、取引についての公事訴訟、物産の取調べ、商売工業の盛衰等を検査して、その有様を知らんとするにも、人民の間に帳合法のたしかなる者あらざれば、暗夜に物を探るが如くにして、これに寄つ・・・ 福沢諭吉 「小学教育の事」
・・・畢竟婦人が家計の外部に注意せざりし落度にこそあれば、夫婦同居、戸外の経営は都て男子の責任とは言いながら、其経営の大体に就ては婦人も之を心得置き、時々の変化盛衰に注意するは大切なることにして、我輩の言う女子に経済の思想を要すとは此辺の意味なり・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・ さて、この立国立政府の公道を行わんとするに当り、平時に在ては差したる艱難もなしといえども、時勢の変遷に従て国の盛衰なきを得ず。その衰勢に及んではとても自家の地歩を維持するに足らず、廃滅の数すでに明なりといえども、なお万一の僥倖を期して・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・一年間のこの鳥籠の歴史はほぼこういう風の盛衰であったが、その後別に飼うて居った三、四羽のカナリヤをこの籠の中へ入れたので、忽ち病室の外が賑うて来た。大抵な鳥はこの追いこみ籠に入れると、今までよく鳴いて居たものも全く鳴かなくなるのが普通である・・・ 正岡子規 「病牀苦語」
・・・である不屈不撓な事業熱をもっている船長イーベン・ホーレイの多難な生涯と揚子江上の荒々しい回漕事業の盛衰とをこの小説の縦糸にしているのである。 中国の歴史がうつりかわるにつれて揚子江沿岸の軍閥が擡頭して、白人の事業を破滅に導き、それがやが・・・ 宮本百合子 「「揚子江」」
出典:青空文庫