・・・その年は饑饉だったので、貧民救済事業として行われたので、県庁の保助があった。女から子供まで。 人員 二三百人 ダイナマイトのきかない岩は何? 日数 二月位。 ○崖中から水がたれて居る。 ○岩の間に菫の小さい葉がしげり・・・ 宮本百合子 「「禰宜様宮田」創作メモ」
・・・ 一寸妙な気のする事だけれ共、それは県庁が、比較的景色の好い精神的と肉体的とを兼ねたこの健康地を選らんだと云うばかりだけれ共、その生徒の中から此村に落される金ばかりは割合に労働なくて得られる金の唯一なものであった。遠い村に家のある生徒は、半・・・ 宮本百合子 「農村」
・・・隣の間に鬚美しき男あり、あたりを憚らず声高に物語するを聞くに、二言三言の中に必ず県庁という。またそれがこの地のさだめかという代りに「それがこの鉱泉の憲法か」などいう癖あり。ある時はわが大学に在りしことを聞知りてか、学士博士などいう人々三文の・・・ 森鴎外 「みちの記」
出典:青空文庫