・・・危または外交の利害などいうといえども、その心術の底を叩てこれを極むるときは彼の哲学流の一種にして、人事国事に瘠我慢は無益なりとて、古来日本国の上流社会にもっとも重んずるところの一大主義を曖昧糢糊の間に瞞着したる者なりと評して、これに答うる辞・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・ 特権階級の政治的無能と没落のしるしを聖書のことばで瞞着するということは世界のどの歴史の蔵相もあえてしなかったことです。日本の蔵相は人民を愚弄しています。 この場合、婦人代議士は何をしているでしょう。彼女達の多くは何といって話をして・・・ 宮本百合子 「今度の選挙と婦人」
・・・ けれども、けなされれば心持の悪いという事実は瞞着するに余り自明である。 其の気分を読んで、自分は思わず溜息をついた。そうだ。真個にそうである。 何に、彼那人が彼那事を云ったって、自分の生命の価値に何の損失も与える事は出来ないの・・・ 宮本百合子 「樹蔭雑記」
・・・のファッショ化が、どんな階級的裏切りであるか、自己瞞着しきれなくなって来た。「ナップ」の守って来た線が正しかったことを認めた以上、別に、前線作家同盟というものを作るべきではない。 まず、「文戦」を脱退して日本プロレタリア作家同盟に参加し・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・するかということ、その富農らに百姓はどんなに瞞着され、ふりまわされるかということ。猶農民の一般的な貪慾さなどというものを、ゴーリキイは嫌悪し、農村の暗さ、野蛮さ、農民の愚痴っぽさに対して都会の優越を、都会の労働者の積極性を対立させ、より高く・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
出典:青空文庫