・・・というのでついて行くと、又妙な階子段をのぼって、行けそうにもない衝立のすき間のようなところを抜けて、今度は石敷の大階段のある広いところへ出ました。そのガランとした廊下にテーブルを出して二人の巡査の見張っているところで傍聴券を貰いました。何に・・・ 宮本百合子 「共産党公判を傍聴して」
・・・ バルザックの文章は、書かれている事件が複雑な歴史に踏みへらされたパリの石敷道にブルジョアの馬車が立ててゆく埃を浴びているばかりでなく、文章そのものが、まるで、一見無駄なものや、逸脱したり、曖昧であったりする様々な錯綜したものを引くるん・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・もう一つあちら側に戸口があってそこから内庭――建物の全然反対な通りまで出られる石敷のがらんとした玄関。階段を登り、右手の扉を押して入った。そこは一般の廊下である。いくつも同じような樺色の平凡な戸が廊下に向って並んでいる。一つの戸は内部に入れ・・・ 宮本百合子 「モスクワの辻馬車」
出典:青空文庫