・・・吉弥の心を確かめるため、また別れをするためであった。十一時ごろ、帰りかけると、二階のおり口で、僕を捉えて言った。「東京へ帰ると、すぐまた浮気をするんだろう?」「馬鹿ア言え。お前のために、随分腹を痛めていらア」「もッと痛めてやる、・・・ 岩野泡鳴 「耽溺」
・・・ S先生が生きてさえおられれば、もう一遍よく御尋ねして確かめる事が出来るのであるが残念なことには数年前に亡くなられたので、もうどうにも取返しがつかない。もしS先生の御遺族なりあるいは親しかった人達を尋ねて聞いて歩いたら、あるいはその断片・・・ 寺田寅彦 「埋もれた漱石伝記資料」
・・・とえそれが落ち始める時にはうつ向きに落ち始めても空中で回転して仰向きになろうとするような傾向があるらしいことに気がついて、多少これについて観察しまた実験をした結果、やはり実際にそういう傾向のあることを確かめることができた。それで木が高いほど・・・ 寺田寅彦 「思い出草」
・・・ただ馬が特に感電に対して弱いものであるという事だけは馬に関する専門家に聞いて確かめる事ができた。なおこれについては高圧電源を用いていくらも実験する事が可能であり、またすでにいくらかは実験された事かもしれない。しかし実験室で、ある指定された条・・・ 寺田寅彦 「怪異考」
・・・折れた機材どうしが空中でぶつかったときにできたらしい傷あとも一々たんねんに検査して、どの折片がどういう向きに衝突したであろうかということを確かめるために、そうした引っかき傷の蝋形を取ったのとそれらしい相手の折片の表面にある鋲の頭の断面と合わ・・・ 寺田寅彦 「災難雑考」
・・・この点を確かめるには、実験室内でできるだけ気流をならしておいて、その中で養ってあるとんぼにいろいろの向きからいろいろの光度の照明をして実験することもできなくはない。しかし実験室内に捕われたとんぼがはたして野外の自由なとんぼと全く同じ性能をも・・・ 寺田寅彦 「三斜晶系」
・・・ここ数年来の経験でこの事実を確かめることができた。もっともステッキに限らず大概の国産商品がそうであり、ちゃんとした器械類でさえも長持ちのするのは珍しい。ステッキが用のない人のぜいたく品ならば、なるべく早くいけなくなって、始終新しく取り換える・・・ 寺田寅彦 「ステッキ」
・・・自分が色めがねをかけているかいないかを確かめるためには、さらに翻って既知の自然を省みまた大いに疑わなければならぬ事はもちろんである。 疑わぬ人ははなはだ多い。欠レ知のはなはだしきものでまた無知のはなはだしきものである。雨の降る日は天気が・・・ 寺田寅彦 「知と疑い」
・・・それがどういう動機でまたどういう種類の行為であったかを確かめる事ができないのであるが、ともかくも、普通の温順なるべき象としてあるまじき、常規を逸した不良な過激な行為であった事だけは疑いもない事であるらしい。そういう行為をあえてするという事は・・・ 寺田寅彦 「解かれた象」
・・・しかし、聞き違え、覚え違いがどれだけあるか、今となってはもうそれを確かめる道はなくなってしまったわけである。 B教授は欧州大戦の刺激から得たヒントによってある軍事上に重要な発明をして、まずF国政府にその使用をすすめたが採用されないので次・・・ 寺田寅彦 「B教授の死」
出典:青空文庫