・・・ 三 じゅりあの・吉助は、遂に天下の大法通り、磔刑に処せられる事になった。 その日彼は町中を引き廻された上、さんと・もんたにの下の刑場で、無残にも磔に懸けられた。 磔柱は周囲の竹矢来の上に、一際高く十字・・・ 芥川竜之介 「じゅりあの・吉助」
・・・人は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代りの男を磔刑に処してやるのだ。世の中の、正直者とかいう奴輩にうんと見せつけてやりたいものさ。「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、・・・ 太宰治 「走れメロス」
・・・ キリストの磔刑を演出する受難劇の場面で始まるこのフランス映画には、おしまいまで全編を通じて一種不思議な陰惨で重くるしい悪夢のような雰囲気が立ち込めている。これはもちろんこの映画の題材にふさわしいように製作者の意図によって故意にかもし出・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(4[#「4」はローマ数字、1-13-24])」
出典:青空文庫