・・・ こうして、おじいさんは日の照る日中は村から、村へ歩きましたけれど、晩方にはいつも、この城跡にやってきて、そこにあった、昔の門の大きな礎石に、腰をかけました。そして、暮れてゆく海の景色をながめるのでありました。「ああ、なんといういい・・・ 小川未明 「海のかなた」
・・・ 空中楼閣を描く夢はアインシュタインとて持ったであろうが、いまそれが、この栖方の検閲にあって礎石を覆えされているとは、これもあまりに大事件である。梶にはも早や話が続かなかった。栖方を狂人と見るには、まだ栖方の応答のどこ一つにも狂いはなか・・・ 横光利一 「微笑」
・・・世紀末から世紀始めへかけて五六の偉人がその礎石を置いた。キェルケゴオルもまたその内に伍するのである。 この書の成るに当たって、永い間本を借してくだすった井上先生、大塚先生、小山内薫氏、本を送ってくだすった原太三郎氏、及び本の捜索に力・・・ 和辻哲郎 「「ゼエレン・キェルケゴオル」序」
出典:青空文庫