・・・人間が自分のたべる穀物や野菜の代りに家畜の喰べるものを作っているのです。牛一頭を養うには八エーカーの牧草地が要ります。そこに一番計算の早い小麦を作って見ましょうか。十人の人の一年の食糧が毎年とれます。牛ならどうです。一年の間に肥る分左様百六・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・彼は故郷自由の国アメリカ、黒人に対する私刑 オムスクから二時間ばかりのところに、すっかり新しい穀物輸送ステーションが出来ている。屋根からつららの下った貨車。そびえるエレバートルの下へ機関車にひかれて行く。何と新鮮なシベリア風景だ。・・・ 宮本百合子 「新しきシベリアを横切る」
・・・遠く水力電気発電所がみえる。穀物、家畜を積んだ貨車と、農具を満載した貨車とがすれちがった。 都会だ。工場だ。都会の工業生産と、労働者との姿が巨大に素朴にかかれている。 閲兵式につづいてデモはモスクワ全市のあらゆる街筋から、この赤い広・・・ 宮本百合子 「インターナショナルとともに」
・・・イナオは木で作った先きの方をじゃがじゃがさせた一種の木幣で、家の守護神様、穀物の神様、水や火の神様にこのイナオを捧げるのであります。 さすがに寒い所だけあって、神様の中でも炉の神様を最も大切にいたしますが、この神様はお婆さんでフッチと名・・・ 宮本百合子 「親しく見聞したアイヌの生活」
・・・一応とりあげられている、穀物の安価、馬を熊にとられた事件等だけでは読者に北海道へ移住した農民の深刻などたん場の有様がうつらないのである。それは主人公宗一の移民としての日常生活があまり深く現実的にかかれていないところからも来ると思う。文章に、・・・ 宮本百合子 「小説の選を終えて」
・・・八月の空には雲が多く白く金色に 又紫に輝いて地に 穀物は実り たわわなれどああ 何と云う哀愁!心 堪え難く痛み耀きも 色彩もその悦びを忘れ果たようだ。嘗て わたしの歓に於て無二であった人今はこ・・・ 宮本百合子 「初夏(一九二二年)」
・・・地上に咲き満ちる花と、瞬く小石と、熟れて行く穀物の豊饒を思え。希望の精霊は、大気とともに顫う真珠の角笛を吹く……」 けれども、そう書き終るか終らないうちに、苦痛の第一がやって来た。彼女は、幸福に優しく抱擁される代りに、恐ろしく冷やかに刺・・・ 宮本百合子 「地は饒なり」
・・・その野蛮人たちの男は狩りを仕事とし、女は木の葉でふいた小舎の前で穀物をついたり、酒をかもしたりして働き、彼等の間では結婚の形態も、原始のままで行われていた。一つの部落内では集団婚で、良人と妻とは互に一人が一人のものときまっていなかった。狩り・・・ 宮本百合子 「貞操について」
・・・ 農村で集団農場がどんなに殖えたかは、去年の穀物総収穫が、一昨年の七千百七十万トンに比べて八千六百六十万トンに増加したことで明らかだ。 発電所の新設工場は、ドネープル河をはじめ所々方々で行われている。 鉱山、油田に於ける労働から・・・ 宮本百合子 「なぜソヴェト同盟に失業がないか?」
・・・ 蓄わえた穀物はなくなるのに、何を買う金もない。何で親子五人の命をつないで行ったらいいのだろう? そこへ、海老屋ではまたも難題を持ちかけて来た。 一俵の米もよこされない。それじゃあすまないから、今まで貸してやっていた金を、暮まで・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
出典:青空文庫