・・・同じこの理由から、前巻に収められている「突堤」のはじまりの文章も分りにくい。当時は、そういうことをあからさまに書くという心持そのものが抗議をあらわすものとされていて、治安維持法の対象とされたのだった。あの頃の作者と読者とはほんとに敏感で、お・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第五巻)」
・・・「小祝の一家」「鏡餅」「乳房」「突堤」である。「小祝の一家」「鏡餅」「乳房」どれも今から十四五年前、日本で民主的な文化運動さえも権力によって暴圧されていた時代、人間らしい正当な活動はひそかに組織され、多くの犠牲をもって実行されていた頃の出来・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第四巻)」
・・・小説「突堤」その他。一九三六年一月。市ヶ谷刑務所から東京地方裁判所に通って予審がはじまった。一月三十日、父の急死によって葬儀のために仮出獄した。二月。二月二十六日事件を裁判所で知った。小使がつい、予審判事に戒厳令・・・ 宮本百合子 「年譜」
出典:青空文庫