・・・しかしレナードの急き込んだ質問は、冷静な、しかも鋭い答弁で軽く受け流された。 レナード「もし実際そんな重力の『場』があるなら、何かもっと見やすい現象を生じそうなものではないか。」 アインシュタイン「見やすいとか見やすくないとかいう事・・・ 寺田寅彦 「アインシュタイン」
・・・ それはとにかく、自分たち平生科学の研究に従事しているものが全然専門の知識に不案内な素人からいろいろの問題について質問を受けて答弁を求められる場合に、どうかすると時々ちょうどこのヤルカンドの歯医者の体験したのとよく似た困難を体験すること・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・第一に、蓄音機の存在にかかわらず音楽放送が行なわれている事実がこれに対する一つの答弁であるが、そればかりではない、もっと重要なことがある。現在同刻に他所で起こりつつある出来事の音響効果の同時放送中に、過去における別の場所の音的シーンを適当に・・・ 寺田寅彦 「ラジオ・モンタージュ」
・・・と源さんの答弁は少々漠然としている。 白暖簾の懸った座敷の入口に腰を掛けて、さっきから手垢のついた薄っぺらな本を見ていた松さんが急に大きな声を出して面白い事がかいてあらあ、よっぽど面白いと一人で笑い出す。「何だい小説か、食道楽じゃね・・・ 夏目漱石 「琴のそら音」
・・・ この答弁は日高君に対してのみならず、世間の読者のうちで、まだコンラッドを知らずして、余の説と日高君の説の矛盾だけを見てその調和に苦しむ人のために草したのである。 夏目漱石 「コンラッドの描きたる自然について」
・・・向後花袋君及びその他の諸君の高説に対して、一々御答弁を致す機会を逸するかも知れない。その時漱石は花袋君及びその他の諸君の高説に御答弁ができかねるほど感服したなと誤解する疎忽ものがあると困る。ついでをもって、必ずしもしからざる旨をあらかじめ天・・・ 夏目漱石 「田山花袋君に答う」
・・・それを苦に病んで御爺さんが医者に相談をかけますと、医者は何でも答弁する義務がありますから、さよう、海岸へおいでになって何とか云う貝を召し上がったら子供ができましょうよと妙な返事をしました。爺さんは大喜びで、さっそく細君携帯で仏蘭西の大磯辺に・・・ 夏目漱石 「文芸の哲学的基礎」
・・・故意だか偶然だか解りませんけれども勢い私はそれに対して答弁の必要が出て来ました。私は仕方なしに、その人のあとから演壇に上りました。当時の私の態度なり行儀なりははなはだ見苦しいものだと思いますが、それでも簡潔に云う事だけは云って退けました。で・・・ 夏目漱石 「私の個人主義」
・・・彼は『省察録』の第二答弁において証明 dmontrer の仕方に二通りあるという。一つは分析 analyse ou rsolution であり、一つは綜合 synthse ou composition である。分析とは、物が方法的に見出され・・・ 西田幾多郎 「デカルト哲学について」
・・・、内行の不取締、醜といわるれば醜なれども、詐偽・破廉恥にはあらず、また我が一身の有様は自ずから人に語るべからざる都合もあることなるに、斯くまでに酷言せずともなどといささか不平もありながら、さりとて何と答弁の辞もなくして甚だ苦しきことなるべし・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
出典:青空文庫