・・・利潤を追い求める企業としてのあらゆる性格と方法とを備えて来て、どっさりの金を出す広告は気狂いじみた権利を紙面に主張するようになった。各新聞の古風な商売仇的競争も、商品としての新聞の売行きのために激しく鼓舞され、記者たち一人一人の地位は、木鐸・・・ 宮本百合子 「明日への新聞」
・・・そんな紙面を見ると、ある種の人々の感情はなんだかうんざりしてしまう。本質的には、底をついた植民地的収奪の生活にうんざりしているその気持が、新聞記事の調子を通して、組合だの、前衛組織だのへ向って流されてゆく。めいめいの現実につながった人民的な・・・ 宮本百合子 「新しい抵抗について」
・・・ソヴェトの建設は一見平凡な工場生活、大した変化はないらしく見えるクラブの研究室、震撼的記事はない『プラウダ』の紙面のかげに、堅実にもりあがりつつある。革命とともに出発した作家たちは、一言で云えばありすぎる社会的課題に押されて、とりつき場を失・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・小学校一年生の算数の本にもこの紙面にスペースの足りない憾みは感じられるのである。良書は内容の徳性に加えて、子供の心理の抑揚の溌剌さが尊重されていなければならないと思う。 宮本百合子 「“子供の本”について」
はなしはちょっとさかのぼるが、一月六日アカハタ「火ばな」に「宮本さんの話」という投書があった。一月も六日といえば、選挙闘争に本腰がはいって、その日の紙面もトップに田中候補が信州上田で藤村の「破戒に学ぼう」と闘っているニュー・・・ 宮本百合子 「事実にたって」
・・・自分の紙面に挑発や真実でない記事、事実をはっきりつきつめないで平気で社会に向ってものをいうような人々の一定の政治的傾向からの発言などがのることを、恥しいこととして感じる感覚を失わせられている。新聞週間がはじまったときの街頭録音で、発言した人・・・ 宮本百合子 「ジャーナリズムの航路」
・・・毎朝、小さい鍵で、箱の蓋を開けるとき、自分は必ず丸い大様な書体で紙面を滑って居る母の手跡を期待して居る。 自分が其那に待ちながら、同じように待って居るに異いない母へ、屡々音信をしないのは、気の毒だと思わずには居られない。 今日も、先・・・ 宮本百合子 「樹蔭雑記」
・・・はる子は心を打たれ、やや暫くその紙面を見つめていた。 それにしても一通り考えると、まるで見当違いなこの圭子に対する悪罵を、何故千鶴子は書かねばいられなかったのであろう? 圭子はぼやかしたところのない性格で、ずばずば口を利いたし、勝気でも・・・ 宮本百合子 「沈丁花」
・・・それらの紙面で先ず目をつけるのは社会欄です。社会記事から創作の材料を得たことは一度もありませんが、「なるほど、こういうこともあるのか」と思うような、さまざまの世相を見たり考えさせられたりするので、かなり興味をそそられます。そうした記事をすぐ・・・ 宮本百合子 「身辺打明けの記」
・・・重視しているということと、一層強くなっている食糧人民管理の潮先とが、並んで一枚の紙面を埋めているのである。宮城地方では、農民が「隠匿油罐を踏み台」にして政府の主食糧強制買上に反対の気勢を上げた。農民の、分厚い肩が重なって、話をきいている写真・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
出典:青空文庫