・・・生活のまったく絶息してしまったようなこの古い鄙びた小さな都会では、干からびたような感じのする料理を食べたり、あまりにも自分の心胸と隔絶した、朗らかに柔らかい懈い薄っぺらな自然にひどく失望してしまったし、すべてが見せもの式になってしまっている・・・ 徳田秋声 「蒼白い月」
・・・悪戯の犠牲になった怪我人は絶息したまま仲間の為めに其の家へ運ばれた。太十は其夜も眠らなかった。彼は疲労した。七 怪我人は蘇生した。続いて脳震盪を起した。其家族は太十を告訴すると息巻いた。其間には人が立った。太十の姻戚も聚って・・・ 長塚節 「太十と其犬」
・・・ 心臓の鼓動は微かながら続いているから、生きてはいるのだが、見るも恐ろしいような形相をして絶息している。 もう一刻の猶予もされない。 水を吐かせ、暖め摩擦し、そのときそこで出来るだけの手当がほどこされたのである。 ここいらの・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
出典:青空文庫