・・・アナキネは大変美しく可愛い娘で、織物を織ることが上手であった。みごとな織物をする上に美しいものだからオリムパスの神々の間にさえ大評判になった。神々の首領であったジュピターはその大変美しい織物上手の娘が好きになった。ジュピターの妻ジュノーの嫉・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・けれども本当に考えてみますと、実際に私達のいるものは五時間ですから、どこかの織物工場で五時間働いて織物をつくるなり、どこかのゴム工場で五時間働いてわれわれのはく靴や雨合羽をつくって、それらのものがお互いの等しい価値で運転するならば、あとの五・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・綿花を栽培し、織物工場で働く耳輪だけ大きい痩せたインド人の後に、ヘルメット帽をかぶり、鼻眼鏡を光らしたイギリス人がいた。 ソヴェトの子供は、幼稚園で、或は小学校で、自然界と人間社会との関係を、日常のあらゆるいきた労作の中から直接学びとる・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・旧大名の華族たちが、只虫干をするだけで蔵にしまっている古文書類ももっと天下に役立てられなければならないし、特殊な生産はその代表的な土地にその方面の図書館があってよいだろう。織物に関する図書館は足利とか京都とかに置くという風に。美術館、博物館・・・ 宮本百合子 「実際に役立つ国民の書棚として図書館の改良」
・・・程よく、斬新な色調の織物、宝石の警抜な意匠、複雑な歯車、神秘的なまで単純な電気器具、各々の専門に従って置きかえる。 それ等の窓々を渡って眺めて行く私共は、東京と云う都市に流れ込み、流れ去る趣味の一番新しい断面をいつも見ているようなもので・・・ 宮本百合子 「小景」
・・・奴隷が畠を耕し織物を織り、家畜を飼って――生活に必要な労働を負担して、ギリシアの自由人の文化生活の可能をつくり出していた。このような地下室つきの自由の上で、たとえギリシアの女の自由というようなことを言ったとしても、現実に女奴隷がその社会に存・・・ 宮本百合子 「女性の歴史」
・・・その頃でさえ、全露作家協会の共同金庫は、生活に余裕ない作家の生活援助のために保健費を出したり、原稿料の一部の前借を計らったり、消費組合をもって燃料、織物などの共同購入の便宜を計らっていた。一九三〇年頃には便利な食堂も出来ていた。ノビコフ・プ・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
・・・四方にはドッシリした錦の織物を下げて床には深青の敷物をしきつめる。大きな卓子をはさんで二つ椅子。大理石で少し赤味を帯び大形で彫刻の立派な方は玉座であるべき事をも一つの方をすべて粗末にして思わせる。卓子の上には切りたての鵞ペン・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
・・・ 工場クラブの文盲撲滅学校でやっと二年前に字を書くことを覚えた四十五歳の織物女工が、代表に選ばれてピオニェールの野営見学に出かけ、その報告を工場新聞に書くほど、飛躍的に一般婦人勤労者の文化水準は高まったのだ。が、過去の枷あとは、そう急に・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・煙草・砂糖・織物すべてが高価になり、若いサラリーマンの日常は些細なところまで逼迫してきている。軍需インフレーションは一部をうるおしているであろうが、その恩沢にあずからぬ者の方が多いことは明らかである。この数年来、若い男女の経済生活は、中流層・・・ 宮本百合子 「若き世代への恋愛論」
出典:青空文庫