・・・共学は、いくらか神経質に互を眺めあう場合ではなくて、人間の小さい男と女とが集って一緒に学び、いろいろの研究や催しをもち、ときには競争しながら互にディスカッションし批判しつつ、おのずから能動的な社会活動の機能力をつよめあってゆく場面となって来・・・ 宮本百合子 「小さい婦人たちの発言について」
・・・というような云いかたは詩的な表現として好む人もあるだろうが、現実の人間はもっとつよく高貴な能動の力をひそめているものである。根はしばられつつ、あの風、この風を身にうけて、あなたこなたに打ちそよぎ、微に鳴り、やがて枯れゆく一本の葦では決してな・・・ 宮本百合子 「知性の開眼」
・・・著者はこの三百二十余頁の小冊子の中に、人間の能動的意志としての歴史を科学的に叙述しようと努力しているばかりでなく、それを「新しいヒューマニズムの観点からの叙述」とし、読者の知識慾に答えると共に人類の営々たる進歩のための努力、献身への共感を呼・・・ 宮本百合子 「新島繁著『社会運動思想史』書評」
・・・それに反撥する要求として、一部の作家から文学に於ける能動的精神ということが言われ初めた。 この能動精神は、当時文学の置かれていた所謂文壇的雰囲気の狭さ、無気力さ、非行動性に満足しない感情、即ちこの人生と文学とに対してより積極的な、能動的・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムの諸相」
・・・ 婦人たちがますます本を買って読みながら、自分たちの生きている歴史の意義や女の生活のおくれを自覚してゆく活溌能動の心情を失う方向へばかり導かれているとしたら、購買力として婦人の数の増大することはとりもなおさず、文学なら文学作品の商品化に・・・ 宮本百合子 「婦人の読書」
・・・それゆえ些末な日常的事件は、より広汎な、より能動的な社会的事件の一部=構成分子として吸収されず、どこまでも些末な事件そのものとしてのこるのだ。 こう書いて来ると、「転換時代」第一部がその失敗において、多くのことをわれわれに教えるのがよく・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
・・・作家として、自己の帰趨に迷ったブルジョア作家の一部は、この退潮を目撃して、文芸復興の呼び声を高く挙げ、爾来この二三年間は古典の研究、リアリズムの問題、純粋小説の提唱、能動的・行動的精神の翹望が次々に叫ばれつづけて来たのであるが、文学の実際の・・・ 宮本百合子 「文学における今日の日本的なるもの」
・・・ 積極的な方向をもつ主題なのであるから、作者がそれにふさわしい手法で、能動的に、しかもこくを失わず、複雑な竹造の内的活動と、妻ゆき子との交渉を、折々の情味ゆたかな具体性において引つかみ、押しすすめて行ったら、「風雲」は全く一つのつよくや・・・ 宮本百合子 「文学における古いもの・新しいもの」
・・・この小説で作者の語ろうとするテーマは、朝田医院主及びそれをとりまく一群の現代的腐敗、堕落を逆流として身にうける志摩の技術的知識人の人間的良心、能動性の発展の過程に在ることは明らかである。単なる事件、人事関係、デカダンスの錯綜追跡の探偵もの風・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・のテーマが含んでいる歴史的な方向、氏によって嘗て提唱された能動精神のその後の消長等に対する疑義をこの作品の内部に見たことを念頭において、告知板の文章を書いておられるのである。 ある文学的雰囲気というようなものや、そこの中でののびのびとし・・・ 宮本百合子 「夜叉のなげき」
出典:青空文庫