・・・ 世界中が俺の臣下のように畏こまって並んでいる。 今こうやって、鳥より楽に、素晴しく空を歩いている俺、たった一人のこの俺! スースー……スースー…… 王者になったような心持でいる六をのせて、綱はだんだん山奥へ入って行った。・・・ 宮本百合子 「禰宜様宮田」
・・・それはそれまで人民の主人であった公方と藩主とをはっきり臣下とよぶ天皇であり、その制度であると示された。一天万乗の君の観念はつくられ、天皇の特権を擁護するために全力をつくした旧憲法が人民階層のどんな詮索もうけずに発布された。当時の笑い草に、憲・・・ 宮本百合子 「平和への荷役」
・・・違せり、一国一城を取るか遣るかと申す場合ならば、飽くまで伊達家に楯をつくがよろしからん、高が四畳半の炉にくべらるる木の切れならずや、それに大金を棄てんこと存じも寄らず、主君御自身にてせり合われ候わば、臣下として諫め止め申すべき儀なり、たとい・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書」
・・・せり、一国一城を取るか遣るかと申す場合ならば、飽くまで伊達家に楯をつくがよろしかるべし、高が四畳半の炉にくべらるる木の切れならずや、それに大金を棄てんこと存じも寄らず、主君御自身にてせり合われ候わば、臣下として諫め止め申すべき儀なり、たとい・・・ 森鴎外 「興津弥五右衛門の遺書(初稿)」
出典:青空文庫