・・・ さあその辺の次第もあろうと、かねて手配りをいたしておいて、その閣令の草案も今日ようやく手に入れました。 や、それは、と善平はわれ知らず乗り出して、それは重々の上首尾で、失礼ながらあなたの機敏なお働きには、この善平いつもながら実に感・・・ 川上眉山 「書記官」
・・・族編の如きは、古来日本に行われたる家族道徳の主義を根底より破壊して更らに新主義を注入し、然かも之を居家処世の実際に適用す可しと言う非常の大変化にして、所謂世道人心の革命とも見る可きものなるに、其民法の草案は発布前より早く流布して広く世人の目・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・然るに、徳教書編纂の事は、先年も文部省に発起して、すでに故森大臣の時に倫理教科書を草し、その草案を福沢先生に示して批評を乞いしに、その節、先生より大臣に贈りたる書翰ならびに評論一編あり。久しく世人の知らざるところなりしかども、今日また徳教論・・・ 福沢諭吉 「読倫理教科書」
・・・仮に、首相が楢橋氏の進言に従って三菱の婿としての立場を考え直す、ということで、国を憂える真意を裏づけようとでもしたら、政府は、目下試みているような憲法草案を仮名まじり文にしただけの押しつけや、労働法の骨抜き作業などをつづけることは全く不可能・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・にもかかわらず、現内閣は、よたつきながら、今倒れるか、今倒れるかと思われながら、とうとうモラトリアム公表という重大な危機さえ突破して、どういう工合に作成されたものか、一昨日には憲法改正草案を発表するところまでもち越して来ている。 私たち・・・ 宮本百合子 「現実の必要」
・・・ こんどの憲法草案を、そういう立場から考えますと、私たちにとって非常に重大な関係があることがわかってまいります。 憲法というものは、決して、大理石に刻みつけて、何かの記念品のように、土の中に埋めてしまうものではないのです。生きている・・・ 宮本百合子 「幸福について」
・・・そのほかわれわれが考えなければならないことは、今の憲法草案には天皇は議会を解散させることができるとなっています。そうすると私共がどんなに良心的によい代議士を選んでも、たったひとりの人が議会を解散するといって、それを書いた紙をもって捧げて読め・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・又憲法が改正され、民法改正草案が示され労働基準法が審議されつつあります。旧い封建日本はようよう近代の民主的な人民の生活を持とうとしているようにみえます。社会のあらゆる面での男女の差別待遇は、憲法によって確認された基本的人権における男女の平等・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・すんで夜の九時頃、私が自分の勉強も一休みしようと部屋から食堂に出てゆくと、質素な、別に似合うでもないどてらを着た父がテーブルの横のところに坐って帳面をひろげ、鉛筆をもって頻りにプランを描いております。草案をねるという工合のようでした。小さく・・・ 宮本百合子 「父の手帳」
前書 一九三六年六月十八日。マクシム・ゴーリキイの豊富にして多彩な一生が終った。恰度ソヴェト同盟の新しい憲法草案が公表されて一週間ほど後のことであった。ゴーリキイはこの新憲法草案の公表によって引き起さ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの伝記」
出典:青空文庫