・・・かえりみて学者の領分を見れば、学校教授の事あり、読書著述の事あり、新聞紙の事あり、弁論演説の事あり。これらの諸件、よく功を奏して一般の繁盛をいたせば、これを名づけて文明の進歩と称す。 一国の文明は、政府の政と人民の政と両ながらその宜を得・・・ 福沢諭吉 「学者安心論」
・・・また、著述書の如きも、近来、世に大部の著書少なくして、ただその種類を増し、したがって発兌すれば、したがって近浅の書多しとは、人のあまねく知るところなるが、その原因とて他にあらず、学者にして幽窓に沈思するのいとまを得ざるがためなり。 けだ・・・ 福沢諭吉 「学問の独立」
・・・東洋諸国に来たる欧羅巴人は、支那・日本の語にも通じて、著述などするものあり。西洋人に限り天稟文才を備うるとの理もあるまじ。ただ学問の狭博はその人の勉・不勉にあるのみ。一、翻訳書を読むものは、まず仮名附の訳書を先にし、追々漢文の訳本を読む・・・ 福沢諭吉 「学校の説」
・・・ これより余は著述に従事し、もっぱら西洋の事情を日本人に示して、古学流の根底よりこれを顛覆せんことを企てたる、その最中に、王政維新の事あり。兵馬匆卒の際、言論も自由なれば、思うがままに筆を揮うてはばかるところなく、有形の物については物理・・・ 福沢諭吉 「成学即身実業の説、学生諸氏に告ぐ」
・・・文学とそれらの著述の本質が全くちがうものであることを、文学者としての良心と責任とにおいて明かにしようとしている。このような事実も、今日のわたしたちのように幾種類もの「脱出記」をよまされる者にとって、なにごとかを告げる主題である。また、一九三・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十一巻)」
・・・理事というところには、日本の代表的著述家・作家が顔をならべている。これらの人々の顔ぶれの世俗的に賑やかな体面上からも、日本の文学が瀕している危機にたいして黙っていられないはずであろうと思えた。こちらからの話があれば、文芸家協会の議題にのぼる・・・ 宮本百合子 「ある回想から」
・・・ 九名 三名 一名 二名 ― 一名 六名漁業 三名 一名 ― ― ― ― 二名酒造家 一名 五名 ― 一名 ― 一名 二名著述家 四名 二名 一〇名 ―・・・ 宮本百合子 「一票の教訓」
・・・ありようと、後に日本の科学の大先輩として貢献した人々の若き日の真摯な心情とを、医学者としてのベルツ、生物学者としてのモールスが記述していて、文学における小泉八雲、哲学のケーベル博士、美術のフェノロサの著述とともに、私たちにとって親愛な父祖た・・・ 宮本百合子 「科学の常識のため」
・・・「石橋真国は語学に関する著述未刊のもの数百巻を遺した。今松井簡治さんの蔵儲に帰している。所謂やわらかものには『隠里の記』というのがある。これは岡場所の沿革を考証したものである。真国は唐様の手を見事に書いた。職業は奉行所の腰掛茶屋の主人であっ・・・ 森鴎外 「細木香以」
・・・ 日本支那の古い文献やら、擬古文で書いた近世人の著述やらが、この頃沢山に翻訳せられます。どれもどれも時代が要求しているのかも知れませんが、わたくしのほしいと思う本は、その中に余り多くないのでございます。中には近世人の書いた、平易な漢文を・・・ 森鴎外 「『新訳源氏物語』初版の序」
出典:青空文庫