・・・ この場合、ドン・キホーテになぞらえられている発明家という人物を、さっきのように一行為者としてのマルキシストに置きかえて横光の以上のような結論の性質を観察して見るとしたら、私たちの感想は、これを何と表明したらよいであろうか。 横光・・・ 宮本百合子 「一九三四年度におけるブルジョア文学の動向」
・・・ 文学の面で、近頃亀井勝一郎氏、小林秀雄氏共々、文学評価の科学性というものに反対を表明している。従来、科学的といった評価は、単に文学作品の生れて来た社会の歴史的階級的環境、条件を説明するにとどまっていた。それでは芸術は分らない。芸術的価・・・ 宮本百合子 「全体主義への吟味」
・・・発明家とその同志が、手を組み合せ、大事に、重そうに、やっこらと物を運ぶしぐさでだけ暗示的に表明される。 大詰は、社会主義国の首府から迎えの飛行機がやって来る。飛行機は、未来のアメリカの屋上着陸所みたいな高い高いところで止っているのだそう・・・ 宮本百合子 「ソヴェトの芝居」
・・・そして、戦っている国と国との中の人間らしい勇気をもった知識人、勤労者たちは、その主張を表明した。戦争を欲するものの国際的連帯があるならば、その不幸を防ごうとするものの国際的な協力も当然生じて、第一次ヨーロッパ大戦は、はじめて、世界的に平和主・・・ 宮本百合子 「それらの国々でも」
・・・したがって批評する者の任務は、ある一つの作品、あるいは一つらなりの文学作品について、自分の主観から好きとかきらいとかを表明するところにあるのではなくて、ある作品を生んだ作家が意識しているといないとにかかわらず必ず代表している社会的な要求を、・・・ 宮本百合子 「近頃の感想」
・・・中国の建築・食物・色彩感・日常的商取引の道徳習慣など片々とした知識を材料として考えただけでも、中国の性格が自然に対しても積極的であり、人間の意志を表明すること憚りない傾向を示していることが興味ふかい。 在来の所謂支那通の人の書くものを読・・・ 宮本百合子 「中国文化をちゃんと理解したい」
・・・てつかわれているらしい伊藤整の衝動という用語をもって表現すれば、歴史に内包するこのような新しい文学への潜在的な衝動こそ、かえって多くの人間的欲求をもつ文学者の頭脳に反射作用し、逆に日本の知性への不信を表明させもしているのだろうと思われる。・・・ 宮本百合子 「人間性・政治・文学(1)」
・・・当時は、一般ジャーナリズム、文化人がまだこのような言論抑圧に対して、その不当を表明するだけの気持をもっていた。各方面から内務省の態度が非難された。保護観察所は文筆関係者と内務省検閲課の役人とを招いて、懇談会を開いた。これは直接にはどれだけ効・・・ 宮本百合子 「年譜」
今度の内閣は、従来とかくものごとが厳秘主義であったの対して、「率直に現実をしらしめる」ことを表明し、一つの新しい態度と見られていると思います。上から現実を知らしめるということと、文学者が切々たる人間の心で下から現実を反映し・・・ 宮本百合子 「文学者として近衛内閣に要望す」
・・・紙が闇で、それは刻々に値上りし、紙のタヌキ御殿が出現して新聞を賑わす有様は、出版の自由がどんなに歪み、単に営利化されているかという事実を表明している。一頁あたりの闇紙が高価ならば、その一頁からうんと儲けなければならないのが、資本主義の出版企・・・ 宮本百合子 「文化生産者としての自覚」
出典:青空文庫